2022.12.11

小さな狛江の沖縄資料館 初訪問記

1通のDMに背中を押されて

 「小さな狛江の沖縄資料館」は、東京都狛江市にある私設資料館です。小田急線の喜多見駅から徒歩5分ほどの閑静な住宅地の中にあります。 

 私が初めて同館を知ったのは、2022年9月上旬の、とあるTwitterでの発信です。

 このツイートの写真を見て、沖縄の貴重な本などが置いてあるのであれば、ぜひ訪ねてみたいと思いました。そこで、引用リツイートをしたところリプライをいただきました。

 その後DMで場所を教えていただき、近々伺いたいと思いながら、忙しさにかまけて3か月ほど時が過ぎてしまいました。

 2022年12月5日の朝。通勤中にTwitterを開いたところ、1通のDMが。そこには理由と共に、「本当にお越しくださるなら、早急に」というメッセージが書かれていました。
 先延ばしにしていたことに猛省し、一番最速で訪問できる日が連絡をいただいた翌々日。仕事前の1時間ほどであれば行けるので、その日に行くしかないと思い訪ねることにしました。

資料館を初訪問

 

 DMをいただいた翌々日の2022年12月7日に初めて訪問しました。資料館は2階にあるので、階段を上った先にあります。左側の奥まったところが入り口です。

 その中を入ると、左手に新着資料・書籍が置かれていました。なんとありがたいことに、われわれが執筆した『つながる沖縄近現代史』を置いていただいていました!

 入口(玄関?)からして、沖縄本やグッズ、着物などが展示してあり、いったいどんな場所なのかワクワクしながら奥へ進んでいきました。

偶然の出会いを楽しむ

 私とちょうど同じタイミングで訪ねてこられた方がいたので、一緒に案内していただきました。そのあとほどなくしてもう1人いらしたので、3人で管理人の高山さんのお話をお聞きしました。
 館内はたくさんの写真・手作りの年表、焼き物などの作品、本などがあり、ちょっと秘密基地っぽい雰囲気がありました。真ん中あたりに手作りの「がじゅまるの木」(作成中)があるのが印象的です。この手作り感が、個人的には興味をそそられました。
 

 たくさんの展示物があるのでゆっくり見ることもできます。しかし、この日は案内されるがままに、同席した3人で高山さんのお話を聞かせていただきました。特に私は時間が限られていたので、お話を伺って失礼させていただきました。展示については次回ゆっくり見てから書きたいと思います。

 今回、特に印象に残ったお話は、この資料館の存在意義(価値)の話でした。その話や当日起こったことから、この資料館の特徴を2点お伝えしたいと思います。

特徴➀:資料館=アートである


「がじゅまるの木」が語ること

資料館の中央に存在するがじゅまるの木のオブジェ

 資料館の中央に「がじゅまるの木」があります。これは手作りのオブジェです。その思いは、次のメッセージに象徴されていると思います。

ここに何としてもがじゅまるの木を立てます。
足りないもの、それは「沖縄問題」と自然を繋ぐアートだ

 当日、「がじゅまるの木」について詳しく聞いたわけではないですが、これを作るに至った思いをお聞きしました。それは、この資料館自体をアートにしたいということです。


 そのきっかけになったのは、内灘闘争を研究している金沢の某大学の先生だったそうです。その方が関わっている資料館のパンフレットを見たところ、アート作品を通じて伝えていたとのことでした。それにインスピレーションを受けたとおっしゃっていました。

 このがじゅまるは幹しかないですが、葉は、展示の写真や年表などの展示物とのこと。展示してある写真も、沖縄戦、島ぐるみ闘争、コザ騒動、基地問題をはじめとしたいわゆる「沖縄問題」に関するものと同じ空間に、ハジチをした女性たちの写真や焼き物、缶カラ三線など、同時期にあった・存在したものを、あえて同居させているのです。そのことによって、見える景色が変わったと、管理人の高山さんはおっしゃっていました。

アートにすることの意味

 この「がじゅまるの木」があることで、資料館全体がアートになる仕掛け。そのように受け取りました。アートにすることの意味は、感じ方・解釈・受け取り方は、訪問者に委ねられていることだと、お話を伺って思いました。


 写真、展示物、新聞記事、著書、論文などは、事実・実態を伝える役割が大きいです。しかし、事実・実態を伝えるものだからゆえに、受け手の解釈に余白がなくなることがあります。


 もちろん、事実を事実として正確に伝えることは重要だと思います。私自身も研究者として、実証をとても重視しています。

 しかし、それだけでは人々には伝わらないとも思っています。なぜなら、受け取る側に受け取る余地を与えないと、ただひたすらに突き付け続けることになり、やがて眼をそらされてしまうからです。



 そこで、資料を「アート」として受け取れる仕組みをつくることで、見る側に受け取る主導権を持ってもらいやすくなると思います。展示を見る方が自分なりに受け取って、咀嚼し、受け入れていってもらえるのではないかということです。この資料館は自分たちが伝えたいことを伝えたいとおりに伝えることよりは、見る側に「本当に伝わること」にプライオリティがあるように感じました。

 このように受け取った私自身も、「小さな狛江の沖縄資料館」をアートとして楽しんだ証拠かもしれません。

特徴➁:強烈に縁を結ぶ場

 もう一つの特徴は、人・物・情報等が還流しやすく、強烈にいろいろなものとつながる場だということです。

 私事で恐縮ですが、入口に『つながる沖縄近現代史』が置かれていたことを伝えたら、とある若い女性の存在を教えてくださいました。その方とつながれるように、その日のうちに高山さんがツイートしてくださいました。その結果、すぐにその方とつながり、たまたまその3日後にあるイベント(?)があることを知り、会えるチャンスがきたのです。


 実は、仕事の関係で、そのイベントなるものに参加できる時間が30分しかありませんでした。しかし、高山さんのご厚意や思いに応えないわけにはいかないという不思議な気持ちになり、気づいたら「短時間ですが参加させていただきます」という返信を送っていました。

 資料館を訪ねたときに同席した方々も、いろんな縁を結ぶ動きが見えました。縁はつなげようと思わなければつながらないですし、つなげたいという思いが伝わると、人はつながるために動くものだと感じました。

 

 「狛江の小さな沖縄資料館」でつながったご縁については、別記事にてお伝えしたいと思っています。

 「狛江の小さな沖縄資料館」のアクセスは、こちらで確認できます。

 

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